とかく映画館で見るのは大作ばかり。シネコンなどは大嫌いであるのに、かといって電車に乗ってミニシアター系の映画を見るような時間もない。そもそも、近年はアンテナの方がすっかり錆びついてしまっている。
そんな俺にとって、こういった小品の良作って意外と見落としていたりするわけなのです。
というわけで、2005年公開作品、監督・脚本:三木聡、主演:上野樹里の「亀は意外と速く泳ぐ」をご紹介します。
ざっとストーリーを述べると、
「平凡な主婦の片倉スズメ(演:上野樹里)は夫が海外赴任中ということもあって、日々夫の大切にしていた愛亀の“亀太郎”に餌をやることが日課という、退屈な毎日を送っていた。その夫は毎日赴任先から電話をかけてはくれるのだが、もっぱら「亀太郎に餌はやったか?」と確認するばかり。
そんな生活に飽き飽きとしながらも、といって日常を転換する方法も見つけられないスズメだったが、ある日のこと。
ふとした切っ掛けから、スズメは石階段の手すり下に隠すように張られた、小さな小さな『スパイ募集』の求人広告を発見する。
興味を惹かれ広告主のもとを訪れると、安っぽいアパートに金釘流で「クギタニ」と書かれた板表札が貼られている。恐る恐るドアを開けると、その部屋には微妙に怪しいキャラクターの中年夫婦が暮らしていた。
なんでも、二人は“とある国”のスパイであるらしい。
わけのわからぬまま「平凡ね」「こんな平凡バカは見たことない」と随分な言われ様のスズメ。
しかし「典型的な平凡人こそがスパイにふさわしい」という理由で、スズメは晴れて“とある国のスパイ”として採用される。
そのスズメに下された指令は、なんと「普通に生活すること」だった――」
そんな感じで、緩やかに腹筋を刺激するこの映画。
これまでは意識しなかった、“そこそこ”、“平凡”というスズメの日常が、「スパイという任務を与えられた平凡」へとスライドすることで、その日常の中に潜んでいた「なにかヘンなもの」が浮かび上がってきます。
ネタバレ含むレヴューは以下から。
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