18世紀フランスの発明家で、稀代のオートマタ職人として知られるジャック・ド・ヴォーカンソンが制作し、“ヴォーカンソンのアヒル”、あるいは“消化するアヒル”として知られるオートマタのレプリカをご紹介します。
等身大の金属製のアヒルが、穀物を食べ、消化して排泄するまでを再現したこの作品は、ヴォーカンソンの最高傑作として知られているものです。
ジャック・ド・ヴォーカンソン(Jacques de Vaucanson, 1709 - 1782)はオートマタの制作の他、世界初の完全自動織機の発明で知られています。
特に彼の考案したパンチカードを使った織物産業の自動化という概念は、半世紀以上も後に実用化され、さらにパンチカードによるデータ入力という考え方がコンピュータに応用されることにもつながりました。
動画の作品はフレデリック・ヴィドーニ氏が1998年に復元したレプリカで、現在はフランス・グルノーブルにあるオートマタ博物館に展示されています。
画像出典:Wikipedia - Digesting Duck
もちろん機械のアヒルが穀物を消化するわけではなく、排泄物を模したペレットをあらかじめ内部に収納しておき、ゴム管から排出するというシステムになっていたと考えられています(上の構造図は後年にアメリカのアーティストが描いたもので、正確なものではありません)。
画像出典:Smithsonian.com
いわば経口摂取から排泄に至る“生命のシステム”を疑似的に再現しているわけですが、ヴォーカンソンは機械のアヒルが化学物質を充填した人工腸の複雑なシステムを持っており、機械的な括約筋さえ備えているというデマを貴族の集うパーティーの席上で吹聴したといいます。
ただし彼のウソがばれたのは1844年、奇術師のジャン・ウジェーヌ・ロベール=ウーダンによる解明を待たねばなりません。
ヴォーカンソンが機械のアヒルを制作したのは1739年のことですから、実に100年以上も彼のカラクリは人々を欺いたことになります。
しかしヴォーカンソンは、この作品のために世界初の柔軟なゴム管を発明したとされており、機械史における重要な作品だったことに変わりありません。
ヴォーカンソンが制作したオリジナルの“消化するアヒル”は、1879年に博物館の火災で消失したと考えられています。
完訳 からくり図彙(ずい) 村上 和夫 並木書房 2014-10-10 |
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[参考:Wikipedia - Digesting Duck / Smithsonian.com]
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