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 私たち人間は、現在この地球上でただ1つ生き残ったヒト属(ホモ属)、いわゆる現生人類です。
 2万数千年前に絶滅したホモ・ネアンデルターレンシスを最後にホモ・サピエンス以外の種は絶滅したと考えられてきましたが、その失われた鎖をつなぐかもしれないヒト属の新種、“ホモ・ナレディ“の骨が発見されました。
[New Human Ancestor Discovered: Homo naledi (EXCLUSIVE VIDEO)]

 ホモ・ナレディの骨を発見したのは、スティーブン・タッカーとリック・ハンターという2人のアマチュア洞窟探検家。ある時、タッカーとハンターは南アフリカ・ヨハネスブルクの北西50キロに位置する、ライジング・スター洞窟を探検のために訪れました。

 ライジング・スター洞窟は洞窟探検家にとっては魅力的なスポットとして知られていましたが、20世紀前半に一帯のエリアで初期人類の骨が数多く発見されたことから「人類のゆりかご」と呼ばれる地域でもありました。

 しかしブランクがあるとはいえ、かつては化石採掘のメッカであったこの地で、しかも洞窟探検のために何人もの人が訪れていながら、なぜこれまでホモ・ナレディの骨は発見されなかったのでしょうか?

 実はライジング・スター洞窟の奥には「スーパーマンのクロール」と呼ばれる片腕を伸ばさなければ通り抜けられないほどの狭隘な通路があり、2人が細身だったことで初めて、その穴を通り抜けることができたのです。

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 しかもスーパーマンのクロールの先には「ドラゴンの背中」と呼ばれるギザギザで峻嶮な壁が立ちはだかり、その上にも狭い通路が続いています。
 タッカーとハンターは、その通路をさらに進み、ついにその奥に直角に落下する20センチにも満たない細い通路を発見するに至ります。

 つまり2人の男性は、骨格や筋肉が極めて細身で、向う見ずな性格を持っていたがために骨の在りかを発見する事ができたというわけです。

 しかしタッカーとハンターには洞窟探検のスキルはあっても、発掘調査のスキルはありません。そこで古人類学者のリー・バーガー博士らが中心となって、「細身の発掘調査チーム」を募集。
 応募により資格を得た全てが若い女性だったというメンバーを、バーガー博士は“地下の宇宙飛行士”と呼びました。

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 その結果、調査の開始された2013年以降、調査チームは洞窟内で1550個以上の骨を発見することとなります。これはアフリカ大陸では過去最大規模の発見で、少なくともホモ・ナレディ15体分に相当するそうです。

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 ホモ・ナレディは、原始的な特徴と現代的な特徴を併せ持つという、これまでには見られない特徴を持っています。

 例えば、手の骨のつながりは現代的である半面、指は樹上生活に適したように曲がっています。さらに大腿骨の付け根はアウストラロピテクス属と似ていますが、下方に行くにしたがって現代的になり、足部の形態は現代人とほとんど区別がつきません。

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 また頭の骨は小さく、脳は約560cc、ホモ・サピエンスの半分にも満たない容量です。しかし小さな頭を支える体は、成人男性で身長150センチほど、体重は45キロほどと決して小さくないのです。

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 つまりホモ・ナレディは、肩や腰、動体などには初期人類の特徴が残る一方、下半身にはより現代的な進化が見られ、頭蓋骨と歯には新旧の特徴が入り混じっているのです。

 米デューク大学の古生物学者、スティーブ・チャーチル氏はホモ・ナレディの持つ奇妙な特徴から、「アウストラロピテクス属からヒト属へと進化する移行期に位置する種ではないか」と語っています。



 こうして発見された新たなヒト属は、地元の言語であるソト語で星を意味する“ナレディ”の名を与えられ、星の人「ホモ・ナレディ(Homo naledi)」と名付けられました。

 ホモ・ナレディの発見は、まさに過去半世紀における古生物学史上最大の発見であり、あるいはミッシングリンクをつなぐカギとなるかもしれません。

B013GWA5NANATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2015年 10月号 [雑誌]
ナショナル ジオグラフィック
日経ナショナルジオグラフィック社 2015-09-30


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参照・画像引用:National Geographic / ナショナルジオグラフィック日本版