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 ゴッホの切り取られた耳。それは画狂人としてのゴッホを語るに欠かせないエピソードだということは、おおむね知られていることだろうと思います。
 それはともかく、3DプリンタとDNAが束になれば物凄いことができるんだぞ、というアートプロジェクトが展開中です。
 なんと、ゴッホの弟・テオの玄孫(やしゃご)のDNAから、ゴッホの耳のレプリカを複製したというのです。

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 この奇抜なプロジェクトを行ったのは、オランダ人アーティストのディームット・シュトレーベさん。
 シュトレーベさんはこれまでにも科学とアートの融合を試みており、今回のプロジェクトもボストンの病院との協力により行われたものだという。

 具体的にというべきなのか、一応の説明としては、ゴッホの弟であるテオドルス・ファン・ゴッホの玄孫(やしゃご)に当たる、リーウ・ファン・ゴッホさんから提供された軟骨細胞のDNAを用いて、3Dプリンタで出力されたゴッホの耳のレプリカを複製したということのようです。

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「包帯をしてパイプをくわえた自画像」

 ゴッホの「耳切り事件」は有名ですよね。

 端折って説明すれば、ちょっとヤバげなモードに入ってしまったフィンセント・ファン・ゴッホが、自らの耳を切り落として、ラシェルという娼婦に手渡したとして語られる猟奇的な逸話でありますが(ザックリすぎますね)、実際には「耳たぶ」であったとかないとか。

 で、今回のお話。

 たぶん読者も頭が(?)で一杯になってしまうところの、そもそもDNAで形成された生体組織を3Dプリンタで出力できるものなのか? などの疑問が頭を駆け巡るわけですが、キネコ的には良心に基づいて、「わからないものはわからないまま説明するんだ」と開き直っておきたいと思います。

 だって海外サイトも国内サイトも、そういう技術論的なところを曖昧なまま、説明してくれてやしないんですから(たぶん大抵のライターが解ってないんだと思います)。わたしゃ、基本文系ですから。

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培養液で生かされる「ゴッホの耳」。すごくSF的ではあります。

 というわけで事実関係だけをザックリと。

 今回制作されたゴッホの耳のレプリカは“生体アート作品”として、ドイツ南西部の街、カールスルーエにある美術館「カールスルーエ・アート・アンド・メディア・センター」にて展示されています。

 で、そもそも「弟の玄孫のDNAでレプリカなんて作れるの?」という疑問については、リーウ・ファン・ゴッホさんは、ゴッホとだいたい遺伝子の16分の1を共有しているらしくて、耳の形もなんとなく似ているレベルにはあるのだそうです。「なんとなく」とか「だいたい」とか、しごくテキトーな文脈だけれども。

 そして、美術館を訪れた来館者は、マイクを使ってこの耳に話しかけることができます。

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話しかけてます?

 つまり、来館者の声は栄養倍液を通り抜け、時を越えてゴッホの耳に届くというコンセプトなわけなのです。

 鼓膜もなければ、声を認知する脳も再生されてないじゃないかとか、この際そういう瑣末なことはどうでもいいのです。なぜなら、この耳はアートの目を通せば「ゴッホの耳」なのですから。

 というところで、この作品展示で、いちばん面白いところが見えてきます。

 つまり、生きた組織を3Dプリンタで出力された人体の部位が存在する、というところ。これって、ごく普通に考えてすごいことです(原理的なところは「わからないまま説明するんだ」と開き直っているわけですけれども)。

 要するにですね、この耳、生きてます。
 そして、ゴッホの遺伝情報を含んでいます。

 理論的には数年間は生き続けることのできる生体組織を展示することができる、という事実には興味深いところがあります。そして、その展示は耳だけにはとどまらないだろうということも、理論的にはいえるはず。

 例えば、これは私がコタクで書いた記事なのだけれども。

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 ペニス博物館だって「ラスプーチンの生きたペニス」を展示することができるというわけなのです。はい、妄想申そう。

[Via. Sploid / AFPBB News]

※追記:なるほど、テセウスの船か。いろんな見方があるもんです。

Vincent Van Gogh: The Complete Paintings: Etten, April 1881 - Paris, February 1888Vincent Van Gogh: The Complete Paintings: Etten, April 1881 - Paris, February 1888
Ingo F. Walther Rainer Metzger

Taschen America Llc 2012-12-15

Vincent Van Gogh: The Complete Paintings: Etten, April 1881 - Paris, February 1888