シコルスキー賞、ついに達成なる!
カナダ・トロント大学を中心に設立された AeroVelo チームが、テストフライトにより64.11秒の滞空と3.3mの高度を達成したことが認められ、正式に「シコルスキー賞」を授与されることが決定したようです。
シコルスキー賞はアメリカ・ヘリコプター協会が1980年に設けた賞で、人力で60秒間以上、3m以上の垂直浮上に成功した技術者に与えられるというもの。
以来、ダビンチIIIや日本のYURI-Iなどが人力による浮上に成功してきたものの、ヘリコプター協会の規定する基準をクリアすることは難しく、33年間にわたって現代航空史の未踏峰とされてきました。
航空機のパイオニアであるイゴール・I・シコルスキーを記念して設けられたシコルスキー賞ですが、今回受賞を達成した人力ヘリコプター『Atlas』は、直径20.4メートルの4つのローターを低い位置に配置し、地面効果を利用するという機体。この方式では日本のYURI-Iは先駆者に当たります。
YURI-Iが日本記録を樹立した映像はこちら。
実は日本でも79歳の伊東孝彦さんがシコルスキー賞受賞のために人力ヘリコプター「YUKIGAYA ZERO」の設計・製作を続けていたのですが、残念ながら先を越されてしまったようです。
伊東孝彦さん設計の「YUKIGAYA ZERO」の模型。
詳細については、『人力ヘリの会』のウェブサイトをご覧ください。
受賞を達成した『Atlas』は、約58メートル、重量わずか52キログラムという軽量の機体で、巨大なローターを低速で回転させるというもの。
約1年半前に初期設計を開始し、初飛行に成功したのが9ヶ月前。動画のテストフライトは今年6月13日に行われたもので、記録が国際飛行協会(FAI)に正式認定されたことで、7月11日に受賞の運びとなったようです。なお、賞金は25万ドル(約2500万円)とのこと。
1980年に設置され、以来33年間というもの受賞者の現れることのなかったシコルスキー賞も、ついにその記録の終わりを見ることとなりました。
今後はさらなる記録の向上や、もしかしたら実用化へ向けた新たな展開などをどこかの開発者が行うことになるのかもしれません。
(Via.Boing Boing / MACLEAN'S News / 参考:engadget 日本語版 / 雪ケ谷制御研究所)
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