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 世界でも珍しい精神疾患の一つに数えられる「コタール症候群(Cotard's syndrome)」は、いわば自らの肉体を「死体」あるいは「朽ち果てていく」と信じこむ、“身体性の否定”に根差した精神疾患だという。
 全米を震撼させたゾンビ・アポカリプスも過去のことになりつつありますが、こちらは精神的な意味で自らを「ゾンビ」であると信じて疑わない、現在も存在する病であるようです。

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 コタール症候群が公式に記録されるのは、日本では明治13年に当たる1880年(1882年とも)。とある中年女性がジュール・コタール(Jules Cotard)というフランスの精神科医を訪れたことに始まります。
 マドモアゼルXという抽象的な名前で記録される女性患者は、自分には「脳や神経、胃や腸などの内蔵が存在しない」と信じ込んでおり、今にも朽ち果てつつあるとコタール医師に訴えたといいます。

 これらの極度に悲観的で抑鬱的な症状を、『ニヒリスティックな妄想』を主体とした精神的な症候群であるとコタールは定義し、彼女の症状はコタール症候群として報告されることとなります。

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(ジュール・コタールの肖像写真)

 結果として、マドモアゼルXは自己否定の末に餓死してしまったようなのですが、コタールのメモには、彼女が自分のことを「まさに腐敗の始まった屍体」であると医師に伝えたことが記録されています。

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 アンデッド――生きる屍である自己を確認する“不死の妄想”(といえば逆説的なようだけども)、これらは苦痛である人生を終わらせることができない恐怖と相関していると考えられており、鬱病患者などでは同種の妄想が見られることがあるといいます。

 現在ではコタール症候群も鬱病性障害の判断基準を満たす症状の一つと捉えられており、虚無感や抑鬱感情をともなう感情障害の中では、コタール症候群の症状が見られやすくなると考えられているのだとか。
 また、コタール症候群には“二大内因性精神病”といわれる躁鬱病や統合失調症との相関関係があるとも考えられており、抗鬱薬や抗精神薬の処方のほか、自殺企図のリスクがある重症例ではECT(電気けいれん療法)が実施されることも多いようです。



 上の動画は、「コタール妄想(Cotard delusion)」、時には「歩く死体症候群(Walking Corpse Syndrome)」とも呼ばれるコタール症候群の症状を現した、ケイトという女性の関係者の証言を中心とした短いドキュメンタリー。
 人の脳について解明されたものは、21世紀の現在においてもごくわずかな部分に過ぎないということだけは確かなのかもしれません。

(Via.Oddity Central / A Case Report of Cotard’s Syndrome)

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