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 ヴァギナみたいなパンの後にペニスみたいな虫の話題というのもわざとらしいですが、カナダのヨーホー国立公園から発見されたのは、男根としか思えない姿をした奇妙な生物。
 陰茎形をした化石は約5億500万年前のバージェス頁岩累層から発見されたもので、「Spartobranchus tenuis」と名付けられています。
 90種ほどの現生種を含む半索動物の祖先に属すると見られており、2つの主要な現生グループの“ミッシングリンク”を埋める存在であることを新しい研究は示しています。

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 カナダ・モントリオール大学の研究者チームの発表した研究が、オンラインのネイチャーで公開されたのが3月13日。
 いわゆるカンブリア紀を二分する澄江(チェンジャン)動物群バージェス動物群の中で、後者バージェスの発見に当たる「Spartobranchus tenuis」は、動物の「門」がほぼ出そろったと考えられる古生代カンブリア紀、あるいはカンブリア爆発よりもいくらか後世のものとされています。

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(画像は現生種のギボシムシ)

 発見された標本で最大のものは、約10センチほど。海底や泥の中を独立して行動していたと考えられています。
 また、現存するギボシムシの祖先だと考えられる「Spartobranchus tenuis」は、恐竜のように化石化する要素の一つである骨格やアノマロカリスのような外殻を持っていないため、“泥流”の存在によって姿が保存されたことは極めて稀なことであるようです。

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(画像:nature.com)

 これまで発見された腸鰓類(ギボシムシ類)の化石では約2億年前のものが最古とされていたため、この化石の発見はそのルーツを一気に3億年以上も遡るものといえます。
 しかし5億年という年月にも関わらず、現代のギボムシが持つ繊維状のチューブを持たないことを除けば、この特定のグループのフォームには特徴的な変化が見当たらないそうです。

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 人間を含む脊索動物と同じ新口動物のグループである彼らについて、研究者の一人であるクリストファー・キャメロン博士は述べています。
「脊索動物の起源を理解することは、私たち自身の起源を理解することにもつながります。我々は全て、未知のワームのような祖先を共通しているのです」

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 こうして5億500年前に生息していたことが明らかになった「Spartobranchus tenuis」ですが、彼ら半索動物のグループは長らく、現在のヒトデやウニなどの棘皮動物と同じ海洋生物のグループに属すると考えられてきました。
 しかし、19世紀に発見されて以来、様々の異説も存在しています。おそらく棘皮動物に近縁だが、新口動物の基底的な側系統とする説もある――とするのが、その一例です。

 ところが、新たに発見された「Spartobranchus tenuis」は半索動物の2つの主要な現生グループ、腸鰓類(ギボシムシ類)と翼鰓類(フサカツギ類)の両方の共通の祖先であると考えられています。
 つまり新口動物をつなぐ共通の祖先だとも考えられるわけで、言い換えれば、それはミッシングリンクをつなぐ存在なのかもしれません。

(Via.National Geographic / timescolonist.com / Daily Mail)

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