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 ある種のウミウシが“使い捨て”の生殖器をもっているという生態は、日本の研究チームによって発見されました。
 13日に英国王立協会の専門誌バイオロジー・レターズ(Biology Letters)で発表された中で、研究チームは、「このような『使い捨て生殖器』を使って繰り返し交尾する生物は他に知られていない」と指摘し、この行動を「極めて奇妙」と表現しています。

 取り外し可能なペニスを持つウミウシは、学名をクロモドーリス・レティクラータ(Chromodoris reticulata)」というウミウシ。交尾の際には雌雄両方の役割を担い、かつ交配の後に切り離したペニスを24時間以内に再生させることが確認されました。

 発表された研究によると、クロモドーリス・レティクラータは外部に突出した使用済みの生殖器を切断し、輸精管で螺旋状に圧縮されている幼い生殖器を外側に出すことで、およそ24時間で生殖器を再生。この行為を少なくとも3回は繰り返すことが確認できたとのことです。

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(図:Biology Letters

 上図はクロモドーリス・レティクラータの交配と形態。(a, b)図で同時に相手の膣に生殖器を挿入、(c, d)図は挿入された生殖器の先端、(e)図はペニスの下部にある無数のトゲ、(f)図はトゲにより巻き込まれた精子。各図の矢印は挿入方向を示しています。

 クロモドーリス・レティクラータは人の親指ほどの大きさ。交尾の際には雌雄両方の役割を担い、相手に精子を与える一方で自身も相手からの精子を受け取り、受精のために蓄えておくそうです。
 また、生殖器には無数の細かいトゲが備わっており、このトゲで相手の体内に残された他個体の精子をかきだすと見られています。

 ウミウシの多くは雌雄同体ですが、今回のように生殖器を取り外し、交尾の後に再生させるという生態が確認されたのは初めてのこと。もちろん他の生物においても確認されたことはありません。

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(図:Biology Letters

 交尾後24時間の輸精管。(a)図は圧縮された構造の生殖器。実線部分に螺旋(スパイラル)構造を確認、(b)図はその斜視図、(c)図はスパイラル構造を縦に見た先端部分。

 研究チームは日本のサンゴ礁から収集されたウミウシの交尾を、31回にわたって観察しています。
 交尾は数秒から数分の時間をかけて行われましたが、その後、およそ1日でウミウシが切り離された生殖器を再生させ、再び交尾に及ぶことを確認。研究の成果を「Biology Letters」に発表しています。

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(Via.BBC News / Daily Mail)

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