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 群馬県渋川市の金井東裏遺跡で、古墳時代後期(6世紀後半)の火山灰の地層から、鉄製の甲(よろい)を着けた男性の人骨発見が伝えられたのは、去る12月10日のこと。
 発表は同県の埋蔵文化財調査事業団によるものでしたが、発掘された甲は古墳の副葬品として出土することが多く、実際に人が装着した状態で見つかったのは全国初のことであるようです。

 この画期的な発見は海外にも波及しており、“日本のポンペイで1400年前の鎧を着た戦士を発見”と記された記事なども見受けられます。

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 遺跡の近くでは、榛名山(群馬県)が5-6世紀にかけて数回の噴火が行われたことで知られており、今回発見された甲を着用した人骨も火砕流に巻き込まれて死亡したものと見られています。
 人骨は成人男性で、見つかった甲が胴体部分のみだったことから、戦いの最中に火砕流に巻き込まれたものではないと考えられるとのこと。
 厚さ約30センチの火山灰(深さ約1メートル)に覆われており、榛名山に向かって両膝をつき、うつぶせに崩れ落ちた状態で発見されています。人骨はほぼ全身の骨が残されていたようです。

 男性の年齢は不明ですが、周囲からは数十個の鉄製の矢じりや別の甲も発見されており、また乳児の頭の骨も発見されたとのこと。
 古墳時代に被災した人骨が発見された例は国内にはなく、当時の災害の様子を知る上で第一級の資料となることが期待されています。

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1 溝状遺構内の甲と人骨の出土状況(西方より)

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2 同上部分拡大(西方より)

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3 甲を着装した人骨の状況(東方より)

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4 甲の下位から出土した大腿骨(北方より)

 なお、榛名山の周辺では、今回甲着装人骨が発見された金井東裏遺跡、黒井峯遺跡および中筋遺跡が同じく6世紀に榛名山の噴火で埋没しており、両遺跡は「日本のポンペイ」と呼ばれているそうです。



(Via.Ancient Japan / 群馬県 - 古墳時代の甲(よろい)着装人骨の出土について)

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