cave art 1

 スペイン北部にある洞窟内部の壁画を新たな手法で年代測定したところ、世界最古の洞窟壁画であることが判明したそうです。

 調査が行われたのはスペイン北部のビスケー湾沿いにある、11ヶ所に及ぶ洞窟壁画。その中でも、エル・カスティージョ洞窟に描かれたシンプルな赤い丸模様が約4万800年前という測定結果をはじき出したことで、あるいは「ネアンデルタール人=洞窟壁画の先駆者」論を裏付ける最有力の証拠となりえるかもしれないとして話題となっています。

cave art 2

 今回の調査を行ったのは、イギリスやスペイン、ポルトガルの研究者らによるチームで、彼らは世界遺産であるアルタミラ洞窟を始め、エル・カスティージョ洞窟やティト・ブスティージョ洞窟など、合計11ヶ所に及ぶ洞窟壁画を調査。研究を率いた英ブリストル大学の考古学者アリステア・パイク氏によると、件の壁画は遅くとも4万800年前の作画であるという。

 測定結果が正しければ、フランス南部にあるショーヴェ洞窟の壁画の3万7000年以上前を抜いて、世界最古に躍り出るというわけです。

cave art 3

 1879年のアルタミラ洞窟壁画の発見以来、旧石器時代の洞窟壁画の年代測定はハッキリとしないものが数多くありますが、今回行われたのは「ウラン系列年代測定法」という手法。
 検体には壁画表面に付着した炭酸カルシウムに含まれるウランを使用し、ウランの崩壊速度をベースに年代を入念に測定しました。
 また、一部の壁画は間接的な手法を使用して、以前の推定年代より古いことを証明しており、例えば年代の確度が高い別の遺跡と画法を比較するなどの調査を行ったそうです。

 すると一部の壁画はオーリニャック文化の前期にまでさかのぼることが確認され、これら新たな年代が判明したことで、一部の壁画はネアンデルタール人による作画の可能性が出てきたということらしい。

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(世界最古、エル・カスティージョ洞窟の赤い丸模様)

 ただし、仏トゥールーズ大学の名誉教授で洞窟壁画の専門家であるミシェル・ロルブランシェ氏は、パイク氏の説も充分ではないと指摘しています。
 ロルブランシェ氏によれば、もっと決定的な証拠が出ない限り、ネアンデルタール人の作画とは断定できないとのこと。
「今のところ客観的な証拠はないが、現生人類が描いたとも証明できないのが実情だ。早く何らかの事実が判明することを、私も期待して待っている」とロルブランシェ氏は話しています。

 なお、今回の研究は6月15日発行の「Science」誌に掲載されています(電子版:U-Series Dating of Paleolithic Art in 11 Caves in Spain※英文)。

(Via.ナショナルジオグラフィック / io9)

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