米国の研究チームが、超巨大なブラックホールが近くの星を吸い込む一部始終を観測することに成功したと発表しました。研究チームによると、1万年に1度ほどしか起こらない極めて稀な現象だとのことです。
周囲の物質を吸い込むことで知られるブラックホールですが、普段は銀河の中心に潜んでおり、確認することは難しい。しかし吸い込まれた恒星のかけらによって、時折その存在を追うことができるそうです。
ブラックホールに接近しすぎた星は、その強力な重力で引き裂かれ、ガスを吸いだされる――つまり、そのガスが摩擦熱で光ることで、普段は見えない宇宙の殺し屋の姿が明らかになるのだとか。
(撮影に用いられたNASAの人工衛星 GALEX)
研究を率いたのは、米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究者、ライアン・チョーノック氏らによる研究チーム。
チョーノック氏らは米ハワイ州マウイ島のハレアカラ山にある望遠鏡や、米航空宇宙局(NASA)の衛星を用いて、このガスのフレアを2010年5月に初めて確認。光が消えるまでの約1年間にわたって観測を続けていました。
共に研究を率いた米ジョンズ・ホプキンス大の Suvi Gezari 氏は、「観測を始めた当初、フレアの光が明るすぎて銀河までの距離を正確に測ることができず、フレアの正体が特定できなかった」と話しています。
(画像は GALEX とハワイに設置された望遠鏡「Pan-STARRS」によって撮影されたもの。矢印は銀河を示しています)
観測を続けた結果、研究チームは27億光年離れた銀河の中心にあるブラックホールを特定。このブラックホールは太陽の300万倍ほどの質量を持っており、天の川銀河の中心にあるブラックホールとほぼ同サイズだそうです。
犠牲となった星は、晩年期にあたる赤色巨星の段階に達した恒星で、1天文単位(地球と太陽の間の平均距離、約1億5000万キロ)の3分の1ほどの距離までブラックホールの近くに迷い込んだため、不運な最後を遂げることになったとみられています。
Gezari氏によれば、今回の発見は「ブラックホールによって引き裂かれた星の種類と、犯人であるブラックホールの大きさを特定するための十分な情報が得られた初めてのケース」とのこと。
また、ブラックホールが星を飲み込む様子をはじめから終りまで観測できたのもこれが初めてのケースであり、「この時間尺度がブラックホールのサイズ特定につながるため、今回の観測は非常に刺激的」と話しています。
(Via.AFPBB News / Mail Online / NASA - Mission News)
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