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 この薬を開発したマサチューセッツ大学のマイク・ライダー博士の名前は、ペニシリン発見以来の最大の功績として歴史に刻まれるかもしれません。

 氏の開発した、ウィルスの感染に対する細胞の自然な防衛能力を利用するというその薬剤は、風邪やポリオ、デング熱などの致命的な流感、果てはエイズウイルスにまで万能の効果があると期待されています。

 ウイルスが体内に感染した時、彼らは自分自身のコピーを作成するために本来の細胞を“ハイジャック”し、DNAに似た二重の鎖RNAを作り増殖していきます。その際、我々の細胞はRNAの増殖を防ぐタンパク質を作ることで自らの身を守ろうとします。
 しかし、多くのウイルスはこの防御システムの裏をかくことができます。

 その際、ウイルスから身を守ることができなくなった細胞は、細胞の自殺――いわゆる“アポトーシス”を行うことで、ウイルスの繁殖を防ごうとするわけです。これが細胞の持つ自己防御システムの2つ目のプロセスですが、ライダー博士はこのアポトーシスに着目しました。

 頭字語で「DRACO」と呼ばれるその薬剤は、ウイルスのRNAによって汚染された細胞のアポトーシスを促し、ウイルスごと細胞そのものを破壊するというものです。しかし健康な細胞に影響を与えることはないのだそうです。

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 マウスを使って行われた実験(※上の図)では、DRACOは風邪と風邪の後で発生する細菌を含む15のウイルスを全て消滅させ、マウスの命を救うことに成功しました。
 しかも驚いたことに、早期の投与さえ満たせば、理論上はあらゆるウイルスにDRACOの効果は発揮されるのだそうです。それは勿論、風邪やインフルエンザなどの流感、そして同じようにウイルスによって引き起こされるHIVにも劇的な効果をもたらすものと期待されています。

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(HIVウイルスの模式図)

 研究者のマイク・ライダー氏はこう述べています。
「我々が扱うことのできない若干のウイルスは確かにあり得ます。しかし我々はいまだそれを発見してはいません。抗生物質の発見は、細菌症の治療に革命的な変化をもたらしました。我々は、これがウイルス感染の治療に新たな革命を起こすことを望んでいます」

 ただし、この抗ウイルス剤が実際に販売される可能性は10年後のことだともいわれており、数年にわたる入念なテストを行う必要があります。普及が実現するとしても、まだまだ時間がかかりそうです。

(source.Mail Online)

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