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 トロヤ群小惑星とは、同じ公転軌道上にあって、惑星・恒星間の位置関係を保ちながら公転する小惑星のことです。つまり惑星の重力の影響下にあって、ゆるやかにつながっている小惑星のことらしい。

 木星や火星、海王星にもトロヤ群小惑星が存在しており、土星にはトロヤ衛星のグループがいくつか存在することはすでに知られていましたが、地球を同じ公転軌道上を回るトロヤ群小惑星が確認されたのは初めてのことのよう。論文は28日付の英科学誌「ネイチャー」に発表されています。

 今回見つかった地球のトロヤ群小惑星は直径約300メートル、地球の約8000万キロ前方に位置するとのこと。この小惑星は「2010 TK7」と命名され、公転軌道上を上下に移動しながら公転するという特異な軌道をもっていることが科学者らの注目を集めたらしい。

 地球にもトロヤ群小惑星が存在することは以前から予想されていましたが、トロヤ群小惑星は比較的小さく、また地球から見て常に太陽の方向に位置することが多いために、発見が難しいとされていました。今回発見されたトロヤ群小惑星「2010 TK7」は、太陽から充分に離れた軌道をもつため、望遠鏡でも姿をとらえることができたのだそうです。

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(参考画像:アキレスとアガメムノンの軌道と位置)

 カナダのアサバスカ大学の天文学者で、今回の発見にも関わったマーティン・コナーズ氏は、「この奇妙な小惑星の状態は、伸ばした腕の先にオレンジを持った人が観覧車に乗っているようなものだ」と例えています。

「 オレンジは観覧車の周りを回るが、そのオレンジを伸ばした腕の先に保持しているのは人間だ。オレンジを手放せば地面に落ちてしまうことと同じように、地球の重力がなければ小惑星は軌道を外れてしまう。主にそれ(観覧車)を動かしているのは太陽の重力だが、地球の重力も影響を及ぼしている」

 地球と小惑星2010 TK7が、いつどのようにして道連れになったのかは不明ですが、今後少なくとも1万年は安定した状態を維持することが予想されています。ただし、軌道を地球の軌道に対して奇妙に傾けた位置にある 2010 TK7 は、上下のどちらかに大きく外れた位置に来てしまうため、ロボット探査や有人探査を行う対象にはなりにくいという。

 コナーズ氏によれば、今後より到達しやすい位置にある地球のトロヤ群小惑星が発見される可能性は残されており、「木星のトロヤ群小惑星の一部のように軌道平面上に位置するものを発見できれば、少ない燃料で到達できる探査目標として、興味深いチャンスを提供してくれるだろう」としています。

(source.ナショナルジオグラフィック / AFPBB News)

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