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(画像は1999年逮捕時のケヴォーキアン氏のマグショット)

 安楽死推進論者で、『ドクター・デス(死の医師)』の異名でも知られた、元医師で病理学者でもあったジャック・ケヴォーキアン(キボキアン)氏が3日、米ミシガン州の病院で死去しました。
 知人や弁護士によると、死因は肺塞栓症によるものであるらしく、約2週間前から腎臓や心臓の疾患で入院しており、最近になって肺がんも見つかっていたそうです。83歳でした。

 ケヴォーキアン氏は1980年代から安楽死についての研究を進め、1987年から「死亡カウンセリング」のための医学コンサルタントとしての活動を始めました。1989年には自作の自殺装置を開発し、翌90年には末期病患者の自殺幇助を積極的に推進させる活動をスタートさせており、「ドクター・デス(死の医師)」などと呼ばれました。

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(※開発した「自殺装置」を傍らにするケヴォーキアン氏)

 ケヴォーキアン氏は130人の自殺に積極的に協力したことを自認しており、1998年9月17日にALS患者を自殺装置で死亡させたことを記録したビデオテープが、同年11月22日に放映されたCBSの番組『60ミニッツ』で公開され、激しい議論を呼びました。

 自殺装置は通常、患者自身が装置を作動させますが、このケースでは患者が自力で装置をスタートさせることが不可能な状態であったため、ケヴォーキアン氏が装置を作動。このため放映直後に第一級殺人罪(その後、第二級殺人罪に変更)で告訴され、1999年4月13日に10〜25年の不定期刑とする有罪判決が下されました。

 一方で、遺体を病院や公園、空きビルに置き捨てるなどの奇異な行動もみられ、1998年の会見では自殺を幇助した男性の腎臓を振りかざし、臓器移植を示唆して「先着順だ」と語るなど、多くの人々から反感を招きました。

 その間にも、ケヴォーキアン氏の「自殺装置」や、患者たちが同氏に死をせがむ姿を収めたビデオなどの公開により、米国では末期患者の苦痛への対処方法をめぐる倫理問題が巻き起こりました。氏のもとを多くの人々が訪れ、積極的な死を望んでいる絶望的な現実を前に、“死ぬ権利”の必要を認識する人々も増えました。
 また、末期患者が自らの余命をよりコントロールすることのできる医療の在り方として、ホスピスケアを活用する動きも広がり、医療の在り方も医療介入的な立場から、苦痛を管理する方向へと変化します。

 2007年6月1日には、健康状態の悪化のため、自殺幇助を一切行わないことを条件にケヴォーキアン氏は仮釈放されましたが、釈放後は積極的安楽死についての啓蒙活動を行っていたといいます。
 また、2008年には下院選挙にミシガン州9区から自然法党公認で立候補しましたが、大差で落選という結果に終わっています。

 2010年には米ケーブルテレビ局HBOで、ケヴォーキアン氏を題材とする、アル・パチーノ主演のドラマ『You Don't Know Jack(君はジャックを知らない)』が放映され、再び話題となっていました。なお、このテレビドラマは『死を処方する男 ジャック・ケヴォーキアンの真実』のタイトルで、日本では同年10月、WOWWOWで放映されています。



 ケヴォーキアン氏の弁護士、メイヤー・モーガンロス氏はケヴォーキアン氏が延命措置を受けることを拒んだことに触れ、「平和な死だった。痛みはなかっただろう」と述べたそうです。

(source.米国の「死の医師」が死去、130人を安楽死させ大論争にも / 「死の医師」ジャック・キヴォーキアン氏死去、83歳 / Wikipedia:ジャック・ケヴォーキアン)

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