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 衆院選などは無視します。あえて、この秋深まりつつある夏の日に剣劇人を語ることに意味があるような気がしないでもない。
 というか、はっきり言って意味などない。
 単に現在、地元で再放送をしている以上の意味はありません。はい。

 さて、この剣劇人というのは、必殺仕掛人に始まるオリジナルとしての必殺シリーズとしての千秋楽を飾る作品だったわけですが、当時の人気映画「スリーメン&ベイビー」を下敷きに、もうスタッフの羽目の外し方が個人的にツボというのか何と言うのか、面白いと言ってこれほど面白い作品も中々無いという仕上がりになっています。

 まずキャラクター紹介。
 主役の三人は、

・カルタの綾太郎(演・近藤正臣)
・早縄の清次(演・田中健)
・すたすたの松坊主(演・あおい輝彦) 

 サブキャラには、
・お歌(演・二宮さよ子)
・お七(演・工藤夕貴)

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 という配役になっていますが、シリーズ終焉の決定によるスタッフのタガが外れた部分があったのかどうなのか、基本の必殺モチーフ、つまり「許せぬ悪がおり、それを依頼を受けて倒す闇の○○人がおり」、といった部分は原則的に踏襲しているものの、その原則の部分をことごとくスライドさせています。

 第一に、毎回ごとの仕事の依頼人が存在しないこと。
 第二に、依頼料が依頼人(頼み人)によって齎されるものでないこと(間接的にお歌から依頼があったことが知らされるものの、三人にはまったく興味が無い)。
 第三に、殺害する相手を特定に、また密かに始末するわけではないこと。

 これだけでも、「必殺」というシリーズの枠組みを久々に破っていると言えるでしょう。と同時に、イベント作品としてこれだけハッチャけた作品というのも、後期では比肩するものが無いようにすら思えます。

 まず先に挙げた第一の理由には、
 「主要三人が、娘(とされる)お七の私怨を、ただただ晴らすために“世直し三人組”を演じる」というのが仕事へ向かうモチベーションとなっていることが挙げられます。
 第二に、かつて御金蔵を破った義賊であり、その半金を未だ所持している彼らにとっては、金などはむしろ無用の長物、つまり「仕事料を頼み人から貰う理由が無い」ということが挙げられます。
 また第三には、彼らが特定の人物を人知れず暗殺する理由を持たない、ということが挙げられます。

 つまり、「頼み人を持たず」、「金に不自由しておらず(*むしろ、金なんて幾らあっても役にも立たねえや、とすら考えている)」、「暗殺という方法論を持たない」という点が挙げられるわけです。
 もうね、これだけでも当時の必殺ファンが拒絶反応を示したことには充分理解できるわけですが、では、これが形を変えた必殺ではないのかといえば、個人的には否、となるわけです。

 というのも、先に挙げた三点を取り上げるだけでも、これは(特に)後期必殺シリーズが主軸としてきたもの、つまり「これなくして必殺なるものか」というワンパターンの部分を恐らくは意図的にハズしてる結果なんですよね。
 といって、物語のセンテンスをハズしているわけではない。
 実際、先の三点を外せば、悪役側のドラマツルギーは間違いなく、これまでの必殺のコンテンツを踏襲しているものであるし、逆にいえば、必殺という確立された悪役側のドラマに異質な三人組が降って湧いてくるというスタンスであるように感じられます。

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 思えば、映画の『必殺!稽△表か』に一部の必殺ファンが反感を持ったのも、ようするに「主水の私怨にどうして金もとらずに他のメンバーが協力するんだよ」、という部分だったように思う。

 だけど、そこの部分って、あの当時ですでに形骸化していたのね。
 当時、一部で「あれは必殺じゃない」という声まで聞かれたけど、俺に言わせれば「必殺の許容度を実は理解できていなかった保守的なファンの声」だったように思える。
 だからといって剣劇人がどうのという話じゃないわけだけど――むしろ、あの作品の欠点はカタルシスに決定的に欠けていたということだろうと思う。

 さて。

 で、そんな世直し三人組は、気乗りしないまでもジャジャ馬娘・お七が出刃包丁を懐に一人で突っ走りそうになるところを、見るに見かねて、かつての義賊の技を披露するというパターンなんですが、そこからはもう、チャンチャンバラバラの大活劇。裏を返せば一人娘(お七)にカッコいいところを見せたいという親心の裏返しなわけですが、もう八面六臂の大活躍を見せるわけです。
 ここはもう、開き直って観れば、こんなに面白いものはない。

 何しろ、彼らの戦闘能力たるや尋常じゃないわけですよ。
 綾太郎は二刀流(峯打ち)で雑魚をバッタバッタと昏倒させるし、松坊主は長槍をブンブン振り回しながら蹴散らす、清次は遠距離では早縄を飛ばし近距離では鳥口で殴り倒すといった次第で、観ていて痛快この上ない。
 清次のロングレンジ、ショートレンジを駆使した戦闘能力なんて、もう面白くて仕方ない。しかも三人そろって飛ぶわ跳ねるわの大立ち回り。

 大体において大刀振り回すタイプのキャラは身軽ではないわけですが、綾太郎はトンボきりまくり、屋根から屋根へピョンピョン飛び移るわ船から船への八艘飛びもかくやの大活躍。理屈もへったくれもない。
 はっきり言って、向かうところ敵なしといった風情です。
 そこで最後に、地雷也みたいに大蝦蟇を登場させて、悪人たちが「うぎゃああ」となって昏倒してしまうというパターン。

 いやもう、強い強い(笑)。なまじ「殺しの番号・壱、弐、参」の代わりに剣劇人を助っ人にしていたら、『必殺掘』の真砂屋徳次なんてケチョンケチョンですぜ(笑)。

 まあそれはともかく、俺は剣劇人は好き。大好き。
 それに、お歌さん……艶っぽくて婀娜で色っぽい(←そこかい!)

 最後に、それぞれの決め台詞を。


 綾太郎 「寄らば斬るぞ!」

 清次 「おととい来やがれ!」

 松坊主 「むふふ、バカめ!」

 お七 「夢みたい!カモノハシみたい!」


 おそまつ。

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