必殺!III 裏か表か [DVD]必殺!III 裏か表か [DVD]

松竹ホームビデオ 2001-11-21
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〈人が人を殺す。だが、今は金が人を殺す―〉

【必殺! 裏か表か】
1986年 松竹映画
監督/工藤栄一
脚本/野上達雄、保利吉紀、中村勝行
出演/藤田まこと、三田村邦彦、鮎川いずみ、柴俊夫、村上弘明、京本政樹、伊武雅刀、成田三樹夫、松坂慶子 他

以前の「仕事人2007」関連の記事でもチラッと触れた、TV仕事人シリーズの映画版第三弾、それが「必殺! 裏か表か」です。

前作「必殺! ブラウン館の怪物たち」で、ブラウン管を賑わす人気タレントをこれでもかと投入し、徹底したバラエティー路線を打ち出した映画版「必殺」ですが、今回は、一大ハード&バイオレンス活劇へと作風を一変させています。

何といっても、名匠・工藤栄一監督による叩きつけるようなアクション描写が見所となっていますが、同時に、これまでの作品が辛うじて維持してきた必殺における「様式美」すらかなぐり捨てたことで、ファンの間でも賛否両論を巻き起こす結果となりました。

今回、久々に見たくなりレンタルしたのですが、やはりこの作品に対する評価は「映画」として見るか「必殺」として見るかの視座の違いによって生ずるのだろうとの思いを新たにする反面、やはり「必殺」に他ならない作品だとも感じられました。

矛盾しているようですが、必殺の枠内における活劇の居場所は、この作品によって示唆せられ、次回作の「必殺! 恨みはらします」において結実したのではないかと思います。


続きページのレビューは、ネタバレを含みますのでご注意ください。
久々の必殺記事、長いぞ〜(笑)

この作品における仕事人の存在は、決して「格好良いもの」として描かれてはいません。
殺陣(たて)において必殺特有の形式に企図しない作劇に貫かれているため、組紐を投げる吊り伎などはなんら意味をなさず足手纏いになるだけ、ポッペンなどは使われもせず、素手での殺しも多勢に無勢という具合で、まるで「役立たずは殺されて当然」とでも言いたいばかりに、手ひどく扱われてしまいます。

一部の必殺ファンが拒絶反応を示したのもむべなるかな、と思えるほど徹底したリアリズムに貫かれた本作なのです。

そもそも、主役の中村主水(演:藤田まこと)にしてからが、闇の両替商組合の圧倒的な金の力に追い詰められ、いわば“窮鼠猫を噛む”的な役割を演じたに過ぎず、ついには、その巨悪である真砂屋徳次(演:伊武雅刀)に一矢報いることすら叶わないまま、映画は唐突な終焉を迎えます。

ならば失敗作なのか――といえば、まあ俺は映画版・必殺!では一番好きだったりするのですが(笑)

ストーリーは主水の同僚である同心・清原(演:川谷拓三)が、金をゆすろうと計った真砂屋に謀殺されることから始まりますが、清原の妻であった、おこう(演:松坂慶子)が先代・真砂屋の一人娘であったことが判明するあたりから急展開。
終盤で、秀が岡惚れ?していた女が、主水を陥れるために殺された娘だったことが判明するのですが、どうにも後付けっぽい印象は禁じえません(ちなみに、何げに包丁に手をやってる松坂慶子が恐いっす)。

そのおこうが、喧嘩から救い出した仕事人・秀(演:三田村邦彦)との淡い恋を横軸に、そして真砂屋徳次の謀略により徐々に社会的に抹殺されようとする主水の窮地を縦軸に、物語は壮絶を極める終盤の大活劇へと傾れ込んでいくのですが――どうも細部の突っ込みが甘いというファンの不満も、然りと思わせる部分は随所に散見しています。

さらに悪いことに、主水を窮地に陥れる端緒となった人物、桝屋仙右衛門(演:成田三樹夫)を始末する描写は最後までありません。
これでは、あまりにカタルシスに欠けるというものでしょう。

ただ客観的に見れば、六万両もの巨額の損失を出した算盤頭の彦松(演:岸辺一徳)が両替商・桝屋を追い出されるのは当然という見方もできますし、その後に彦松が自らの意志で一家心中したところで、確かに桝屋が預かり知らぬこと、というのも一理あります。
その彦松に肩入れし、墓代をふんだくってくれと依頼した政(演:村上弘明)が、それを端緒とした主水の窮地に手を貸す分には必然性を感じさせるものの、他のメンバー(特に竜と参)が命を張ってまで主水を手助けする根拠が希薄に感じられるのも事実。

例えば、彦松が桝屋の謀略により濡れ衣を着せられたという描写、そして主水以外の仕事人たちが真砂屋に包囲網を狭められていく描写――この二点をフォローしているだけで、作品の評価はかなり違ったものになっていたのではないか。

真砂屋の言うところの「(主水を)生きながらの死人に変えてやる」という台詞から、後半の「主水一派掃討作戦」へと繋がる違和感などは、その観点からすれば些末な部分に過ぎず「映画の嘘」で説明はつきましょう。むしろ、作劇に必要な「動機づけ」を怠ったことが、致命的な欠点であったろうと考えます。

ただ穿った見方をすれば、この作品における対立軸は一見するところ、仕事人vs闇の金融グループの体裁を取っているかに思えますが、実のところは、意地vs意地の構図なのではないかと思えます。
真砂屋にしたところが、「所詮は役人、金でどうとでもなる」と甘く見たことが主水を奮い立たせる結果に繋がり、また主水は「役人ゆえの」脇の甘さが自らの窮地を呼び込むことに繋がる。相反するようでいて案外、互いの立場にあぐらをかいていた意味では似通っているのかも知れません。

ということは、最終的に徳次を奮い立たせたのは、「金の力で殺せぬ」主水に対する自らのアイデンティティーゆえの意地であり、主水もまた、役人(そして仕事人)としてのアイデンティティーを全否定されたゆえの意地、つまり「金に喧嘩を売った」主水と「金で喧嘩を買った」徳次の意地のぶつかり合いであるがゆえに、あの舞台装置は必要だったのではないか――とまあ、考えすぎかもしれませんが(笑)

だから、この作品を貫いているのは主水、政、そして秀の私怨に他ならず、逆に言えば他の殉死キャラ(壱、参、竜)は添え物でしかないわけです。

とまあ、そういう観点に立てば、主水vs徳次の対決は直接に手を下したわけではないにせよ主水の競り勝ちといえるでしょうし、最終的に勝ちを収めたのは、真砂屋の跡を継いだおこうであったと言えるでしょう。


…ああ、ところであの漁師町らしき村はどこなの?あんな島は大川端にないよ!という疑問と、真砂屋の屋敷はなんであるの?
という突っ込みを入れてた昔のブログ記事を見かけたんですが、あれね、もしかしたら佃島の一角かもしれないす。たぶん金で買い取ったんでしょう。意地の張り合いですから。

まあ所詮は憶測ですが、説明終わり(笑)

それにしても、一時間近く編集でカットされてるんですよね、この作品…。
完全版が公表されることはまず望めないんでしょうけど、なんとかならないもんでしょうかね。
完全版さえ日の目を見れば細かい部分は氷解するかもしれないし、なまじっか、「黄金の血」みたいな駄作じゃないだけ残念でならない(苦笑)


さて、ここからは屁理屈は抜きに、突っ込みどころを必殺ファン?の視点であげてみますが、組紐屋の竜(演:京本政樹)、壱(演:柴俊夫)、参(演:笑福亭鶴瓶)、の三人が殉死を遂げる今作。
壱、参はともかく、竜ってば伊賀忍者(九十九一族)が出自だったはずだから、本来なら、ああいう場面に一番適応できてもおかしくないやん?それなのにあの扱い…ひどすぎる。
元来、色っぽいキャラが好みのこの俺…秀より勇次、政より竜が身上。
ぜひとも竜には、お家芸を遺憾なく発揮して、マキビシやら手裏拳やら炸裂弾やらを駆使して、刺客どもをドッカンドッカンやっつけて、変異抜刀霞斬りやイズナ落としで存在感を見せてつけてほしかった。

というか、世界観変わってしまいますけど(笑)

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石原 興

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