秘録 必殺シリーズの舞台裏―カルト時代劇に賭けた男たち (映画秘宝SPECIAL)

今回でひとまず、仕事人2007関連の記事は終了とします。
といっても、必殺に関しては思うところを記事にしてはいきますけどね。

で、ひとまず区切りの今回、必殺ファンにとってはいい加減聞き飽きた(笑)必殺の前期・後期について、自分なりの考えを披露してみようかと思います。
(※あまり必殺に詳しくない方には、続きのページにシリーズリストを書いておきますので、参考になさってください)

まず、必殺シリーズが特異なのは、連続して15年も放送を継続した作品でありながら、各作品に一定した作調がないことなんですよね。だから例えば、水戸黄門は初代がいいとかいうレベルでは測れない部分があるんですよ。
中には仕事料をとらない作品もあれば、オカルトもある。
そんなシリーズです(笑)

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さて、そんなシリーズですから、便宜的に前期・後期と区別されてはいるものの、それこそ細分化したら全作品ごとに色分けできてしまう。
そんな中でネームバリューとして今に生き残ったのが中村主水(※仕事人)シリーズというわけですが、しかし、その主水の初登場した『仕置人』が初期も初期、実質上の必殺の始まりとさえファンに認知されてるもんだから、一概に前期だ後期だと言ったところで、ならどっからが守旧派なんだ、という話にならざるをえない。

だから、ちょっと意地悪な言い方をすると、変化する必殺を受け入れない層というのが、実は「必殺を既成の概念にはめ込もうとする」守旧派なのかもしれないのかなぁ、とも考えられるわけです。

ただ一面、必殺というシリーズが他の時代劇シリーズと異なるのは、現状維持ではなくて常に変化を繰り返してきた点でもあるんですよね。
となると、考えようによっては、先の記述とはまったく逆の見方も成り立つわけなんですよ。

要するに「必殺とはこういうものだ」という、一定のベクトルにシリーズの個性を押しやってしまうのは、むしろ元来の必殺とは少し違うのではないか?というわけです。となると、シリーズが…というより、制作サイドが保守的になっていったのは、むしろ後期になってからじゃないですか?という疑問も出てくる。

こうやって掘り下げていくと、もう守旧派とか革新派とか、ごっちゃごっちゃになって、わけわからなくなってしまうわけです。

で、俺なりに考えた結果はというと、

いわゆる、
・前期→ハード路線
・後期→ソフト路線
という色分けは、実は表面的なことでしかなくて、
実は、
・前期→革新派路線
・後期→守旧派(マンネリ化)路線
だったのではないか?ということです。

ただし、これ、潜在的には旧ファン層も理解してるはずなんですよ。実際、後期のマンネリを嫌ってる人ばかりでしょうからね。

でも、そうなるとですね(あー!ややこしい!)、前期シリーズのようなものを求める声は、常に「変化する」必殺を求める声と一体であるべきだ――となるはずなんですよね。

要するに、「時代のニーズに合わせて有機物のように変化し続けるシリーズのベクトルが、必ずしもハード路線であるべき必然性はない」んですよ。

だけど実際は、表面的なハード路線を求める声が止まない。

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これは、いわば「表層のハード路線という感覚がステレオタイプ化」してしまったことで、元来は革新路線の時代劇だった必殺(それを支持したはずの必殺ファン)が、いつしか保守層に変化してしまった結果だと思えるんですよ。
こうなるともう、前期⇔後期という色分けすら逆転し始めてくる。

事実、必殺は「既存の時代劇をぶっつぶせ」的なところから始まったわけですが、その必殺が「様式を作ってしまった」が故に、守旧層を生み出した。
したがって覇道だったはずの必殺が、いつの間にか王道に変化してしまい、マンネリ化、つまり「水戸黄門化」してしまった、と。

ここで、受け手(視聴者)と差し手(制作側)の食い違いが発生するんですね。
差し手は現状(数字重視=マンネリ)維持の範囲で受け手に応えようとしているのに、受け手はもっと革新(=原点回帰)しろと迫るわけだから、価値観が噛み合うはずがない。
何故なら、どちらも「元来の必殺精神を失ってる」んですもん。要するに、受け手も差し手も、本道を見失ったんですな。

だから、今度の必殺はひとまず―ひとまず、です―必殺が「時代劇」に返り咲いたものだと考えればいいんです。

必殺は、やんちゃな覇道から、良くも悪くも現状での『時代劇』の主流にまで成熟してしまったんですよ。
これは仕方ない。
それだけ長く続いちゃったシリーズなんだから。

事実、今回の仕事人2007は細大において、そこらの単発ドラマよりも、よっぽど『時代劇』していました。
これは豪勢な舞台セットが生み出す空気かもしれないし、様式にまで成熟してしまった照明、光と影の映像美が市民権を得てしまった結果からくるものなのかもしれない。

だから敢えて提言しますと――我々必殺ファンは、もう、新たな必殺に過去の作品を重ねて求めることを止めたほうがいい。
それらキラ星のような傑作たちは、埋もれゆく歴史の「記録映像の中にしか存在しない」んです。
今回の作品のメンバーがイケメンばかりだというのも、単に、それが時代のニーズであっただけに他ならない。
初期シリーズ作品がハード路線であったことも同じで、それは単に「そういう時代だったから」という一言に尽きます。

そして制作サイドは、もはや必殺が王道時代劇の仲間入りをしてしまったことを直視して、時代のニーズに迎合した手堅い作品を、ただ淡々と生み出せばいいんです。

もはや、必殺が…いや時代劇が生き残る道は、それしかないんですから。
【必殺TVシリーズリスト(※印は中村主水(藤田まこと)出演作品です)】


◇前期作品
・必殺仕掛人
・必殺仕置人※
・助け人走る
・暗闇仕留人※
・必殺必中仕事屋稼業
・必殺仕置屋稼業※
・必殺仕業人※
・必殺からくり人
・必殺からくり人 血風編
・新 必殺仕置人※
・新 必殺からくり人
・江戸プロフェッショナル 必殺商売人※
・必殺からくり人 富嶽百景殺し旅
・翔べ!必殺うらごろし

◇後期作品
・必殺仕事人※
・必殺仕舞人
・新 必殺仕事人※
・新 必殺仕舞人
・必殺仕事人窟
・必殺渡し人
・必殺仕事人権
・必殺仕切人
・必殺仕事人喉
・必殺橋掛人
・必殺仕事人昂稙編※
・必殺まっしぐら!
・必殺仕事人浩風編※
・必殺仕事人紘雲竜虎編※
・必殺剣劇人
・必殺仕事人 激突!※


〔TVシリーズ限定。スペシャルおよび映画、ビデオ、漫画作品は割愛〕

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